ご相談のきっかけ
今回のご相談は、京都市伏見区の住宅からでした。
家主の方は現在ほかの府県に住んでおられ、たまに戻ってきて建物の様子を確認しているとのこと。
その際に、
「久しぶりに帰ってきたら雨漏りしていた」
ことに気づき、ご連絡をいただきました。
建物は袋小路の奥にあり、人が一人通れるほどの細い通路を40mほど進まないとたどり着けない立地。
解体も一つの選択肢として考えられていましたが、搬出経路を考えると費用が高額になるのは明らかでした。
ただ、放置するわけにもいかない。
「できるだけお金をかけず、雨漏りだけは止めたい」
というのが、今回のご相談の前提でした。
点検で分かった屋根の状態

現地で屋根に上がり、点検を行いました。
屋根はかなり古く、土葺きの瓦屋根。
全体的に経年劣化が進み、瓦のズレや割れが多く見られる状態でした。

特に問題が大きかったのは軒先
雨漏りの原因となっていたのは、軒先部分でした。
- 瓦が一枚、横方向に割れたまま長年放置されていた
- そこから雨水が入り続けていた
- 軒先の野地板が原型をとどめないほど腐食していた
腐食範囲は、おおよそ 1m × 50cm弱。
幸いだったのは、垂木までは腐食が及んでいなかったことです。
雨漏りしている部分は、
垂木とラス地、モルタルでかろうじて形を保っている状態でした。

なぜ野地が腐ったのか
原因ははっきりしていました。
瓦が一枚、横方向に割れた状態で長期間気づかれず、
そこから少しずつ雨水が入り続けていたことです。
地瓦の横割れは、経年劣化ではあまり多く見られない症状です。
台風時の飛来物による破損の可能性も考えられましたが、発生から相当な時間が経過しており、火災保険の対象にはならない状況でした。
修理で対応できると判断した理由
点検の結果、
- 腐食は軒先の一部に限定されていた
- 垂木は生きていた
- 雨水の侵入口が特定できていた
これらの条件がそろっていたため、
全面的な葺き替えや大掛かりな工事は不要 と判断しました。
今回は、
「腐っているところを止める」
「今後、被害が広がらないように整える」
という修理で十分対応できる状態でした。
行った修理内容
今回の修理内容は以下の通りです。
軒先の野地復旧
- 問題のある瓦を一時撤去
- 腐食した野地を撤去
- 生きている垂木に新たに野地板を施工
- 軒瓦を吊り直し、瓦を復旧

範囲が限定されていたため、比較的スムーズに復旧できました。
瓦のズレ・割れの修理
どちらかというと大変だったのは、こちらでした。
- 経年劣化による割れ瓦
- 凍て割れした瓦
- ズレが進んで縁が切れかけている瓦
これらを 50枚以上差し替え。
足場は設けず、2段梯子での作業だったため、
瓦のガラ下ろしや運搬はかなりの重労働でした。

棟瓦の飛散対策
棟では、冠瓦が1本なくなっている状態でした。
原因は、
経年劣化によって胴巻き銅線(瓦固定用の銅線)が切れ、
台風時の風で飛散した可能性が高いと判断しました。
今回は、
ほかの現場で出た古い紐丸瓦の在庫があったため、それを使用。
あわせて、意味をなしていなかった銅線固定はやめ、
今後の飛散防止として コーキングによる点付け固定 を行いました。

今回やらなかったこと
今回の現場では、あえて行っていない工事もあります。
- 全面葺き替え
- 屋根全体の大規模修繕
- 足場の設置
建物の状況・立地・ご予算を考えると、
やるべきではない工事だったからです。
施工後の状態
修理後は、
- 雨漏りは確実に止まった
- 軒先の構造は安定した
- 今後ズレや飛散が起こりにくい状態になった
という状態になりました。
古い屋根であること自体は変わりませんが、
「このまま放置すれば被害が広がる状態」からは脱しています。
施主さんの反応
大工事にならず、
比較的小規模な修理で雨漏りを止められたことに、
施主さんは安心されていました。
こちらとしては体力的にかなり大変な現場でしたが、
状況に合った判断ができた事例だと感じています。
同じような状況で悩んでいる方へ
- 空き家に近い状態
- 建て替えや解体も検討中
- でも今すぐ大きなお金はかけられない
こうしたケースでは、
「とりあえず全面工事」ではなく、
今どこが問題で、どこを止めるべきか を整理することが重要です。
京都屋根研究所の考え方
私たちは、
- できるだけ工事を大きくしない
- やらなくていいことはやらない
- 状況に合った判断材料を渡す
ことを大切にしています。
今回のように、
「今は修理で十分」
という判断も、立派な選択肢の一つです。
まとめ
- 雨漏りの原因は軒先の一部に集中していた
- 野地腐食は限定的で、垂木は健全だった
- 全面工事ではなく、修理で止める判断ができた
- 古い屋根ほど、放置すると被害は広がりやすい
屋根工事は、
直すことよりも 判断すること が一番大切です。
雨漏りしているけど、大きな工事が必要か分からない。
今の状態で何ができるのか、一度整理してみませんか。
