ご相談の背景
設計事務所様からのご相談でした。
京都市東山区の密集地にある住宅で、内装リフォーム工事を控えている中、ベランダから屋根を確認した際に棟の崩れが見つかったとのこと。
この建物は、京都ではよく見られる隣家同士が非常に近い配置で、屋根同士が接近しています。
さらに、棟の下り方向に向かって左右の屋根高さに微妙な高低差があり、一般的な納まりでは対応しづらい条件でした。
現時点では雨漏りは発生していませんでしたが、内装工事を進める前に、まず屋根の不安を解消しておきたいという判断で、点検と修繕のご依頼となりました。
点検で確認した状態
棟の長さは約4メートル弱。
切妻屋根の片面(裏面側)で、のぼり1本分の範囲です。
確認できた主な状態は以下の通りです。
- 経年劣化による葺き土の痩せ
- 熨斗瓦と冠瓦のズレ
- 棟全体のラインが乱れ、将来的に崩れが進行する可能性


棟以外の屋根面には、早急に手を入れる必要がある劣化は見られませんでした。
そのため「今後を見据えた予防的な修繕」が適切だと判断しました。
今回の判断ポイント
この現場で重要だったのは、「どこまで直すか」ではなく「どこを直さないか」の判断です。
- 雨漏りはまだ起きていない
- 内装工事前に安心できる状態をつくる必要がある
- 足場を組むと工事規模と費用が一気に膨らむ
- 問題は棟の崩れに限定されている
これらを踏まえ、今回は棟部分のみを最小限で整える修繕を選択しました。
施工内容
足場は設けず、ベランダまで梯子を掛け、ベランダから屋根上は脚立を使用して上り、作業を行いました。
施工の要点は以下です。
- 崩れの原因となっていた棟部分を一度解体
- 左右の屋根の高低差に合わせて、熨斗瓦の段数を調整
- 棟のラインを無理に揃えず、周囲の屋根に自然に納まる形で再施工
京都特有の密集地で、なおかつ高低差がある棟だったため、一般的な「左右均等」の考え方ではなく、現場に合わせた段数調整で対応しました。
工事後の状態
施工後は、棟のラインが安定し、瓦のズレや浮きも解消されています。
高低差のある納まりも視覚的に確認でき、今後の崩れリスクを抑えた状態になりました。
雨漏りが起きてからの修理ではなく、起きる前に必要な部分だけを整えたことで、内装工事も安心して進められる状態になっています。


この施工で大切にしたこと
今回の工事は、決して大きな修理ではありません。
ですが、
- 不要な範囲まで触らない
- 建物条件に合わせた納まりを優先する
- 工事規模を最小限に抑える
こうした判断が積み重なって、結果的に施主様・設計事務所様双方にとって納得のいく工事になったと考えています。
まとめ
屋根工事は、「全部直す」ことが正解とは限りません。
今の状態・今後の使い方・工事のタイミングを整理した上で、必要な範囲だけを整える判断が重要になるケースも多くあります。
今回のように、雨漏り前の段階で棟を整えておくことで、余計な工事やトラブルを防ぐことができます。
雨漏りが起きていなくても、
棟のズレや瓦の不具合は気づかないうちに進行していることがあります。
